−地球科学部門− 教授 板谷 徹丸 (Tetsumaru Itaya)
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【主要研究テーマ】
研究スタイルは時代及び自身の成長とともに変遷してきた.先ず,早稲田大/金沢大/東北大での学生/院生時代に進めた岩石中の不透明鉱物相(硫化鉱物,酸化鉱物,炭質物)を使った岩石成因論がある.岡山理科大学に就職してからは K-Ar 法研究スタイルは時代及び自身の成長とともに変遷してきた。先ず,早稲田大/金沢大/東北大での学生/院生時代に進めた岩石中の不透明鉱物相(硫化鉱物,酸化鉱物,炭質物)を使った岩石成因論がある。岡山理科大学に就職してからは K-Ar 法による地質・岩石・鉱床の年代学に興味が移った。この10年ほどは,地質学や岩石学を基礎にした年代学を固体地球科学に貢献する研究スタイルをとっている。以下は主な研究スタイルによる研究概要である。研究業績リストから分かるように以下の研究は多くの共同研究者に負っている。
Fe-Ti-O-S 系の相平衡を用いた岩石学
岩石中のFe-Ti-O-S 系鉱物の初生共生関係を明らかにし流体組成の推定や流体相の挙動の問題を議論した。取り扱った地質体は三波川及びニューカレドニア高圧変成岩と大峰花崗岩類等である。この系は低温度までサブソリダス反応が進行する事から,初生共生関係の決定には組成累帯構造を持つザクロ石の包有物組織を使ったことが特徴である。この系に関するバックグランドを基礎にFe-Ti 酸化鉱物の地質温度計と酸素分圧計やデイサイトマグマの硫黄溶解度の問題をも手掛けた。1987年頃までの主要な研究スタイルである。研究の一部は1980年に岩石鉱物鉱床学会研究奨励賞受賞の対象となった。
炭質物の石墨化と変成帯の温度構造
変成堆積岩中の炭質物の結晶構造,化学組成,反射率を検討し石墨化のメカニズムを議論した。取り扱った地質体は三波川高圧変成岩と遠野接触変成岩等である。石墨化は二段階の反応で進む。先ず,非晶質な石炭様物質中で石墨の結晶子が形成され,その後,結晶子の成長が進行する。これは不可逆過程の反応であり,石墨化は時間と温度の関数である。しかし,個々の変成帯では石墨化度を用いて温度構造の議論が可能である。特に,低変成度帯の温度構造決定に有効であることを示した。主な研究は1987までに終えたが,XRDを用いた解析法に問題点があり,最近まで気にしていた点を1997年にまとめた。
地質学に貢献するK-Ar 年代学
希ガス用高性能質量分析計及び希ガスの迅速分析技術を K-Ar 年代測定に適用し様々な地質事象の解明に貢献した。(1)中新世以降の火山活動の分解能を格段に高め,プレート運動の変遷に制御された火山活動論に貢献した。(2)微細な変成鉱物の系統的な K-Ar 年代測定から西南日本の付加体及び高圧変成岩の地体構造を明らかにした。それらを基礎に,一般的な島弧ー海溝系の造山運動の新たなモデル構築に貢献した。(3)大陸衝突型造山帯としての西アルプスの研究にも(2)の手法を適用し,テーチス海が閉じる前の沈み込み帯変成作用の時代論に貢献した。(4)断層活動に伴って形成された雲母粘土鉱物のK-Ar年代測定を基礎に断層ガウジ形成年代推定法を確立した。
上記研究の一部は1992年に地質学会論文賞受賞の対象となった。また,1999年3月に地質学会賞(K-Ar 年代の微量・迅速測定法の開発と日本列島の地質年代学)を受賞した。
精密年代測定学
地質事象の初生年代を正確に求めるための試みを実施し幾つかの業績を上げた。(1)低カリウム定量分析法の確立と単斜輝石のK-Ar 年代測定。(2)高圧変成岩の白雲母の不一致年代と塑性変形問題。(3)明礬石のアルゴン離散過程とK-Ar 法の有効性。(4)震源域物質の年代測定と地震の時代決定。(5)人類起源の年代測定 後半の研究スタイルは現在進行形であり,同僚とともに微小領域のAr/Ar年代測定法の開発に成功し,新たに地球惑星科学に貢献しつつある。最近では微小領域アルゴン年代学と岩石学(Micro-chronology and Michro-petrology)の分野に研究の焦点を合わせている。 既存のK-Ar年代測定法でもニュージーランド南島オタゴ変成帯に適用した論文はAmerican Mineralogist Best Paper Award(2003年)を受賞し,K-Ar法の価値を見直すのに貢献した。また,韓国沃川変成帯にAr/Ar年代測定法を適用した論文はIsland Arc Award(2008)を受賞した。